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ロボット工学教授に聴く!ニーズに応えるバランス力を育み

 

山村:さて今日は、帝京大学理工学部情報電子工学科教授の蓮田裕一先生をゲストにお迎えして、ロボット工学をテーマに先生が育んできたこと、育もうとしていることについてお話をお聞きしたいと思います。蓮田先生、よろしくお願いたします。

蓮田:よろしくお願いいたします。

山村:まず先生のプロフィールを拝見しましたら、ご専門が機械加工なんですよね。

蓮田:はい。

山村:そのほかロボット工学、技術教育学、微細加工学、全く違うなと思われる水生昆虫学というふうにあるんですけれども、一体全体何が先生はご専門なんでしょうか。

蓮田:元々は大学も機械工学を専攻していたんですが、自分のことで申し訳ないんですけれども、大学生のときに工業高校から大学に行ってすぐに専門科目というのはなかったものですから、そこの中でちょっと生物のほうに興味を持ちまして、大学の1年生のときから始めたのが水生昆虫学ですね。

山村:水生昆虫学というのは具体的にどんなことをやっていらしたんですか。

蓮田:たまたまなんですけれども、大学に入学して最初の夏休みのときにある日突然、宇都宮の〓石井〓大橋、あそこにある鬼怒川でカゲロウが大発生したんですね。橋の上で車が19台、降り積もったカゲロウを踏みつけてスリップして事故を起こしているんです。それを見てもう一瞬に吸い込まれるように水生昆虫の生態というものに興味を持ちました。

山村:カゲロウが大発生するとその年は豊作だとかと何か言っていたことがあるみたいですけれども。

蓮田:ええ、そうなんですね。ホウネンムシと呼ばれているのが昔からそのカゲロウで。台風が少なくて要するに稲なんかが大きな被害を受けなかったとき、そういうときにやはり川の水なんかも安定していて、それが何年か続くと爆発的にカゲロウとかそういったものが増えるんだと思います。

山村:平安時代の『蜻蛉日記』なんてあるじゃないですか。

蓮田:はい。

山村:あれは何かあって『蜻蛉日記』という名前になったんですかね。

蓮田:私はよく分からないです。カゲロウというのは何種類かあってウスバカゲロウみたいな陸にいる、アリジゴクですよね、あれの成虫もいるし、あとは私が手掛けている水の中にいる水生昆虫のカゲロウだと思います。

山村:本当はそのカゲロウの話もちょっと今日お聞きしたいんですけれども、今日はロボット工学のほうを中心にちょっとお伺いしたいなというふうに思っていまして。先生がロボット工学と出会われたのはどんなきっかけだったんですか。

蓮田:工学となるとやはり大学の授業等ですよね。その後にたまたま、大学を出た後に今市工業高校の機械科の教員になりました。そこで実は、〓私のときだと先ほどの〓、すいません、戻っちゃって、カゲロウの研究等々していたときにそれをどうしても実験室の中で、例えば24時間をぶっ続けで3日4日、七十何時間というふうに調査をするときにどうしても高校生が。この合宿所にプールを造ったんですね。そこで流れるプールっぽい水路を造って、そこに石を入れて水生昆虫を飼育したときにどうなるか。暗くしたらどうなるかとかいろんな要因があったんですね。そのときにどうもやっていた高校生が授業中に居眠りをする。だと思います。ひと晩中やっていましたから。そこで初めて、じゃあこれを無人化するのにはどうしたらいいかということでロボットハンドを作りました。これが初めての私のロボットかなと思いますね。

山村:結構うまくいったんですか。

蓮田:流れる水路がありますから、そこに金魚をすくう網ですよね。それをロボットハンドがつかんで仕掛ける。2時間たつと、それをロボットハンドが抜いてビニールの袋に入れる。そして違う網をまた仕掛けるというのをフルオートでできるように作りました。

山村:じゃ随分高校生の居眠りは少なくなったんですか。

蓮田:と思ったら、どうも合宿所でひと晩中昔はやったファミリーコンピューター、ファミコンの〓クワタ〓が出てくるやつをずっとやっていたのが分かったんで、あまり意味はなかったですね。

山村:じゃロボットがあまり役立たなかった。

蓮田:それと、できたばかりのときに本当にそのロボットが夜中もずっと動くかどうかを彼らは見ていたので、結局自動化には成功したんだけれども無人化には至らなかったという。

山村:なるほど。名言だね。それは名言ですよ。でも今でも結構そういうところはありますよね。

蓮田:そうですね。何でもかんでもロボットができるわけでもないのかもしれないので。

山村:やっぱり人の力というのはどうしても必要なんですよね。

蓮田:そうですね。

山村:今はロボットのそのテクノロジーというのは世の中全体としてもどんな状況なんですか。

蓮田:本当に、日進月歩という言葉があるんですがものすごい勢いで進んでいますよね。例えば私たちの身の周りでももう何年も前から自動洗濯機、あれも洗濯ロボットですし、例えば朝の通勤の方々がお使いになる改札機、これも本当によくできたロボットだと思います。そういったものが、例えば産業界等もそうですし。私なんかが大好きなのは炊飯ジャーも。あの炊飯ロボットはよくできていますよねと思います。

山村:掃除機もあるもんね。

蓮田:そうですね。あれは本当にロボットっぽいですね。

山村:ロボットっぽいですよね。あれはロボットを、プログラミングを作る人というか、そういうことも先生はされるんですか。

蓮田:メカトロニクスと私たちは呼んでいますが機械の部分と電気、電子の部分、そしてそれを動かす制御、情報の部分、そういったものというのは三位一体ですので、ロボットを作るということはプログラミングも当然必須ですね。

山村:われわれはプログラミングというと、すごく平たくいうとレゴの矢印みたいなのをドラッグするだけで何かプログラミングしたような気になって。でも、あれを作る前の段階も電子の部分ですか。

蓮田:はい、マシンですね。ロボットの本体とか。

山村:そういうのを、じゃ先生たちは結構手掛けるというか、作ったりもするんですか。

蓮田:ロボットの例えば設計となると、実は機械のことも分かっていて、なおかつ電気、電子のことも分かる、メカトロニクスのエレクトロニクスですよね。そうするとプログラミングも分かっていないとちょっといびつなものができると思いますね。いびつというか思い描いたものができるということじゃないと思います。

山村:そこが僕はすごく聞きたいんですよね。思い描くということと実際にそのプログラミングというのかな、何かプログラミングのその裏側というか奥にある部分というのをつくっていく人の、それこそ脳はどうなっているんだろうなと思うんですよね。

蓮田:なるほど。確かに。ただ学生を見ていても向き不向きとか、やっぱり興味関心があって、最初は「ああ、すごいな」、あれ、逆に「えっ、どうしたんだろう」と思っても長い間やっていくうちに本当に変わっていくんですよね。やっぱりそういうのを見届けないと向き不向きというのも分からないですし、今言われたその裏側はどうなっているのかなというのもやはり。例えば大学でも、私は高校でもロボットをやっていましたけれども、やはりある程度長い間人を育てるというのは難しいのかなと。そういうのを見極めるというのはおっしゃるとおりだと思います。

山村:本当にあのレゴのEV3なんていうあれは単純なロボットじゃないですか。

蓮田:結構、けど、あれも高機能なんですけれどもね。

山村:高機能。でもやってみると、自分がまさにこういうふうに動かそうかなというふうに思い描く部分と、それから実際にプログラミングを置いていくわけですよね。それを置いて実際に動かそうと思ったときに動かないというね。あれを繰り返すたびに何か人間の脳というのは不思議だなと思って。

蓮田:そうですね。またそういうことを体験しながら脳も発達というか使えるようになってくるのかなという感じもしますけれどもね。

 特に、何か繰り返しで申し訳ないですけれども、そのロボット一つを作るということで、例えばプログラミングをする側もロボットの動きというものを知っていないとやはりうまくいかないですしね。本体のロボットを作るほうもここはこういうふうなプログラムでこうやって動かしてほしいなというのがあるので、そのほうが最もふさわしいというのがありますね。そういったものを分かっていて、そういったものが合体してうまくいくのかなと思います。

山村:今、自動運転なんて随分世の中で話題になっていると思うんですけれども、例えば人を感知して車を止めるという技術はものすごい高度なレベルだと思うんだけれども、あれは現実的にどれくらいまで行くというふうに先生のような専門の方々というのは見ているんですか。

蓮田:全てを見通したわけでもないので本当に自分だけの考えになってしまうんですけれども、最初は人じゃなかったと思うんですね。何かそこに物があるから止まるとか気を付けるとかよける。例えば超音波センサーで何かがあるからそこから先へは行かないとか、もっというと、ぶつかったから止まるとかそういうところもあると思うんですが、今はもう本当に画像処理とかそういったもので人っぽいものをちゃんと認識していると思います。

 ですから、それが進むと本当に事故を起こさないこともできるし、あるいはその前の段階から何か準備ができることまでこれは進めると思います。特に今は高齢者等の事故がちょっと目立つことがあるんですが、そういったことにも十分対応できる時代がすぐに来るんじゃないかな。そういうふうな技術力を持っていると思いますね。秘めていると思います。

山村:実際に人の生活を豊かにしていくロボットというのはわれわれが待ち望んでいる部分もあるし、今お話しいただいていたような洗濯機であったり掃除機であったり炊飯ジャーであったり、そういうものは実際に役立っているんだろうと思うんですけれども、これから先はどんなものがほかに現れてくるんですか。

蓮田:大体、工業製品といっていいのかな、そういったものが進歩する、進化していくというのはやはりニーズにあると思うんですよね。そういったものというのはその時代によって違うですし、これからも変わっていくと思うんですが、例えばこれから、先ほど言った高齢化社会を迎えてくるならば介護関係のロボットがどうしても必要になってきますしね。介護といっても介護をなさる方の支援ロボット的なもの、そういったものとか、その時代に合わせたものというのはこれからどんどん出てくるんだと思います。

山村:うちも介護施設をやっているのでまさにその部分が人手不足の問題と、それから一番大きいのはやっぱり職員の腰痛なんですよね。この腰痛を防止するためにHALとかというロボットスーツみたいなものが今、結構展示会なんかでも見るんですけれども、あれを現実的にその現場で使い切れるかというとちょっと難しいなというふうに思っているんですよね。というのは、1人の人だけが着けていればいいわけではないでしょう。それから1つがものすごく高いんですよね。これを例えばじゃ5人で着回せるのかというとその時間だってばかにならないわけですよね。

蓮田:おっしゃるとおりですね。

山村:それと一方で、でもリフトのようなものもあって、それもかなりロボット化しているなと思って。これはすごく便利だなというふうに思うんですけれども、やっぱりその腰痛を防止できるようなロボットになるのかな。まさにロボットスーツのようなものでもっと手軽に使っていけるようなものというのは、先生は今あれですか。ふと考えられたときにでも可能性というのはありますか。

蓮田:介護の現場、そういったものをきちんと見てきたわけではないので、あやふやなことになってしまうんですけれども、例えばベッドがあってベッドから転落させたくなければベッドの高さを下げればいい。

だけど実際に介護をする方は低くなったところから抱き上げるとかとなると相当腰に負担がかかるんだということは私は何となく想像できるんですね。じゃベッドを上げたらどうなるか。そうすると同じような高さじゃないですかね。すると楽なんだろうという発想になると思うんですが、実際の現場ではそういうわけにはいかないですし。

 確かにそういった支援型のロボット、そういったものがあるんですが、使っている方々のご意見をちょっと耳にすると、なかなか着けている時間がもったいないのでそのままやってしまうとかね。そういったことは介護だけじゃなくていろんなところで生じている問題で。

 やっぱりロボットの、先ほどのお話ですよね。ロボット本体とプログラミングとありますよね。そういったものはやはり現場をよく見ないと、体験しないと改善されていかないですし、新しいニーズに応え切れなくなってしまう可能性はありますよね。

山村:今、大学で先生は学生にご指導されているわけですけれども、学生の皆さんというのはそういった、例えば現場のニーズを捉えていくような機会というのは結構あるんですか。

蓮田:ないですよね。

山村:ないですか。

蓮田:ですからうちの研究室ならば、例えば介護関係の病院に実際にお訪ねさせていただいて現場を見て、実際その現場の方のお話を頂戴する、アンケートの結果を見させていただくというようなことはできるんですが、今の大学のシステムで、すいません、15回全部きちんと授業をやってうんぬんというようなこととなるとなかなか時間を見つけないと難しいのかなと思いますよね。

 先日もというか、実は学生と介護の現場を見てきたんです。おトイレもそうですし、あとはお風呂ね。「ああ、今こういうふうになっているんだ」というのが、見て、学生にとっても私にとっても本当にいい刺激になりました。やっぱり現場を見ないと駄目ですよね。

山村:そうですよね。ぜひうちにも見に来てください。

蓮田:ありがとうございます。

山村:また高齢者の現場と、うちは身体に障害のある方の施設なんですけれども、身体に障害のある方の場合というのもまたちょっと違うんですよね。例えば片側だけがまひの人もいれば全身まひの人もいるという。そういう非常に個別対応をしなきゃいけないところがあるもので、もうぜひ学生さんと一緒に。

蓮田:そうですね。ふと思ったのは全部できてもまずいんだな。ご本人のリハビリみたいと言っていいのか私は〓専門は〓分からないですけれども、治って歩きたいとかそういうふうにしたいというふうな気持ちを下げてはいけない。もう少しチャレンジするようなふうな形でのご支援というのも必要だなと私はその時に思いました。

山村:そうですよね。その辺のバランスがまたなかなか難しいんですけれども。

蓮田:はい、勉強させてください。よろしくお願いいたします。

蓮田裕一先生とのロボット工学についての対談の続きはこちらも是非!

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