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ロボットエンジニアに聴く!ロボットと人の共生社会の育み

山村:さて、今回は、株式会社電通国際情報サービスシニアエンジニアの渋谷謙吾さんをお迎えしています。渋谷さんは、大学時代に生命科学を学んで、心に対する関心を深め、卒業後は、電通国際情報サービスに入社、身近な課題の解決を、『ITと人の感性の合致』をテーマに、データ分析、機械学習などの研究開発に携わっていらっしゃいます。それでは、大学時代に生命科学を学んでいたっていうことですけれども、どんなことを勉強してたんですか。

渋谷:私は、もともと、高校時代はコンピューターとかゲームとかが好きで、いろいろ物を作ったりとか、プログラムを動かしたりっていうことで、進路を考えていたんですけれども、その進路を考えていくに当たって、予備校の先生が、進路を考えるんだったら、自分の好きなことというか、突き詰めたいことをしなさいっていう話をしてくださって、僕は機械とかコンピューターに興味があるんですっていう話をしたときに、世の中で最も完成された飛行機の構造体は鳥であるっていう話をして、やっぱり人間っていうのは、まだ生物にはかなわなくって、生き物から学ばなきゃいけないんだなっていうことで、その生命科学の道を志したっていうところがあって。生命科学って、物理とか、化学とか、生物とか、その生き物に関する知識とか技術っていうのを集大成した物なんですけれども、そういった物を知識とか、テクニックってことで納めることで、自分の理想とする物に近づけないかなっていうのがあって、幅広く勉強してたっていうのがあります。

山村:結構、合理的に物事を考えていくほうですか。

渋谷:考えて、自分の中でもロジカルさを徹底していますし、他人からも、ロジカル過ぎるっていうふうに言われたりはしますね。

山村:でも、今やってるお仕事っていうのは、結構、感情とかそういう世界と、随分と深い結び付きっていうのがあるような気がするんですけれども。

渋谷:おっしゃるとおりです。ありがとうございます。

山村:ロジカルと、感情っていう、その辺のところの融合っていうか、きょう、渋谷さんがされている仕事を、これからスライドを使って教えていただけますか。

渋谷:私の中で、ロジックと感情っていうのは、相反する物ではなくて、感情も、ロジックの結果だと思ってるんです。そういう意味で、感情をつくったりとか、説明したりとか、制御するためのロジックっていうのを、確認して使いたいっていうのが、僕の根底にあったりします。私は、もともと、大学に入って、生命科学を突き詰める中で、やっぱり自分の幸せとか、人の幸せって何なんだろうって突き詰めて考える時期がありまして、私の出した一つの解は、欲しい物が欲しいときに、欲しいだけ手に入るのが幸せだっていうふうに結論に至ったわけですね。ロジカルに。

山村:合理的だね。

渋谷:まさしく。これを考えていくと、お金では得られない物ってどうしてもあって、スリルとか責任感とか、ストレスみたいなものも含めて、やっぱり欲しいときに手に入ってほしい、手に入ることこそが幸せだと思ったんです。そう考えると、お金を稼ぎまくることが幸せではなくて、人の心っていうのをコントロールしたり、人の心を理解して、欲しい物、欲しくない物っていうのを、外からも内側も理解して生きるっていうことが幸せだと思ったんですよ。心を司るものは何かっていうと、脳ということで、私は脳の研究っていうのを、大学の4年から少し始めていったっていうことがあります。

アカデミアでの脳の研究っていうのは、すごく細分化していくような仕組みになっていて、例えば、脳のこの部分の、この機能を作っているタンパク質を構造してる遺伝子がどうこうっていう話になるんですね。これは、もう、非常に重要なことで、医学応用とかたくさんの成果があるんですけども、この細分化の先に、心というものが本当に理解できるんだろうかっていうことに、僕はちょっと疑いを持ってしまっていて、私が生きてる、あと60年とか80年では達成不可能だなと思ったんですよね。

じゃあ、どうしたらいいんだろうかって考えたときに、自分が心と思えるような物を作って、そこに心があるかないかっていうのを判断していくことで、より心の仕組みとか、原理原則に近づけるんじゃないかっていうふうに考えました。構成論的アプローチっていうふうに、手法の名前も付いてることなんですけども、こういった観点から、いったん、生命科学の日常を外れて、ITの道に入ったっていうところです。

なので、今はAIとかロボットやってますけど、初めは、システムをどううまく作るか、どうやったら説明できるような物っていうのを、大きく作れるかっていう方法論に興味があって、システム工学とか、ウェブの仕組みとか、あとはセキュリティーの考え方っていうのに興味を持って、仕事を始めました。

そんなことを考えながら仕事をしてるうちに、2013年前後、機械学習っていう分野でブレイクスルーが起きて、結構、名前の聞くディープラーニングっていう話があったりしますけども、その辺りから、それまで、なかなかAIっていうテクノロジーの中で難しかったことができるようになってきたんです。なので、この範囲で私がやろうとしてることも、もしかしたらできるんじゃないかって考えて、趣味半分、仕事半分っていうところで勉強しながら培ってきたっていう流れはあります。

機械学習っていうのは、今まで人間がルールっていうのを書き下していた物っていうのを、パターンから認識できるようにするっていうテクニックなんですね。例えば、リンゴっていう物をコンピューターが認識するときって、今までであれば、人間が、色は赤いとか、形は丸いとか、模様はどうであるとかっていうのを、いちいちルールとして、一生懸命書いていたと。ルールに合致してる物はリンゴだし、そうじゃない物はリンゴじゃない、だから青リンゴはリンゴじゃないっていうふうに扱っていてしまったんですけれども、そのやり方では限界があるっていうことで、見えてきたのが、たくさんのリンゴという物をコンピューターに見せることによって、自然と、その中からリンゴとそうじゃない物を識別させようっていうテクニックなんです。それを機会学習っていうことで、少し技術的な面とか、学術的な面で、突き詰めてやってきました。

そういうことでやってると、いつしか現れてくる問題として、やっぱり、データが足りないんですよね。リンゴかリンゴじゃないかっていうデータを集めるのに、八百屋さんに行って、数百個のリンゴを見たときに、世の中には本当に見たこともないようなリンゴが現れたりするんで、それを、なぜか人間はリンゴって分かるんですけども、なかなかコンピューターでは限界があるっていうことで、コンピューターにデータを与えるための世界が欲しいと思ったんです。その意味で、その後、少し3Dシミュレーションとか、バーチャルリアリティーみたいなところに興味を持ちまして、コンピューターにデータを与える、要するに、世界を与えるための、環境づくりをしようというふうに考えて、少し勉強してました。この辺から少し、仕事に生かしたりっていうのも出てきたんですけども。

山村:私も、AIの世界とかって、よく分からないところもあるんだけれども、今の学習っていうのかな、世界を与えられて、それを、AIが学んでいくっていうことですよね。

渋谷:そうですね。

山村:じゃあ、人間の赤ちゃんが、リンゴをリンゴというふうに分かっていくというか、学んでいくっていうのは、どんなふうなことなんですか。

渋谷:赤ちゃんが現実世界で、リンゴはリンゴである物ということを学ぶのっていうのは、結構、大事なことが二つあって、一つは教師ですね。正解と呼ばれる物、これがリンゴであるっていうのが正しいんだっていう、情報が一つ重要なこと。もう一個は、繰り返しっていうことで、いろんな側面から正解を教えてあげる刺激っていうんですかね、情報が必要だと考えてます。具体的には、赤ちゃんっていうのは、お母さんにリンゴを見せてもらうときに、これはリンゴだよっていう、リンゴっていう音声と一緒にそれを受け取るわけですよね。例えば、赤ちゃんが、リンゴって、声まねをしたら、お母さんはすごく喜ぶわけですよ。そうすると赤ちゃんは、この物を見たときにリンゴっていう言葉を発していいんだっていうふうに、許可されるというか、承認されるわけですよね。それを、これは正解なんだっていう、一つの有機付けをもらって、成長していくっていうのが仕組みだと思ってます。

山村:そうすると、AIに世界を与えるっていうのは、刺激を与えるっていうことと一緒なのかな。

渋谷:二つの側面があって、一つはリンゴっていう物を作り出して、いろいろ押し付けることができますね、3Dの世界では。もう一個、3Dの世界は、人間が完全にコントロールしてるので、これはリンゴですっていう名前付け、要するに、正解と一緒に与えられるわけですよね。リンゴリンゴリンゴ、ブドウブドウブドウっていうふうに、明示的に教えることができる。

自然の世界だと、お母さんがいないと、これがリンゴかどうかっていうのは、教えてくれる人がいないわけなんですけども、3Dの世界だと、リンゴっていうラベルの付いた物がどんと置いてあればいいので、それはコンピューターにとっては相性がいいっていうふうに思ってます。

そんなこんなで3Dっていう物に注目して、いろいろ勉強してきたんですけども、やっぱり限界があって、物足りなくなったタイミングがありました。というのは、申し上げたとおり、3Dのシミュレーションっていうのは、あくまで人間が作ったモデルでしかなくて、人間が用意したことしか起きないんですよね。これっていうのは、人間がリンゴを識別するために作った、リンゴ識別AIを作るためだったら、すごく有効に使えるんですけども、僕が目指したいのはそこではなくて、やっぱり人間と対等にしゃべれるような、心を持った機械だったりするので、それを実現するためにはどうしたらいいかっていうと、やはり現実世界に向き合わなければいけないんですよね、結局は。

現実世界に、AIとか情報っていうのが向き合うためには、肉体が必要なんですよ。現実世界を移動して、見て、触って、感じるための肉体が必要で、そのデジタルにとっての肉体っていうのが、まさにロボットだったわけです。てことを感じて、ここ数年では少しロボットの、テクノロジー的な部分だったり、どう仕事に生かせるかっていうのを研究してきています。

山村:なるほど。

渋谷:最近、ちょっとやってるのは、動く家具は日本を救うっていうことですね。われわれが動かないと思ってる物を動かしたら、価値って出せるんじゃないかなっていう取り組みをしています。例えば、ここに挙がってるように、今、日本の家とかオフィスにある物って、あんまり動かない物で占められてると思うんですね。例えば、椅子とかテーブルとか、タンスとかテレビとかですね。こういった物って、われわれが動かないと思い込んでいるから、そこに問題があるとか、課題があるって気付きにくいんですけど、実は、障害者とか高齢者の方にとっては、椅子とかテーブルがあるせいで通れなかったりとか、掃除しにくかったりっていう問題が実はあったり。あとは、うちの会社でもあるんですけど、会議のたびに、たくさんの椅子を若い人がせっせと運んでたりっていう現状があって、非常に時間が無駄であると。

山村:非合理的だと。

渋谷:合理的でない。あとは、赤ちゃんとか幼児っていうのは、結構、机とかテーブルに頭をぶつけたりっていうことがあるわけなんですけども、それは本当に、そのままでいいんだっけっていう疑問があったりします。もしかしたら、テーブルとか椅子が、よけてくれたら子どもはけがをしないかもしれない。あるいは、日本って地震大国っていわれていて、ちょっと地震があると、物が倒れてきたりするわけですけど、もしかしたら、タンスとかテーブルのほうが、人間に歩み寄れるのであれば、さっとよけてくれたりとか、かばってくれたみたいなことができるかもしれないっていうことで、僕らが動かないと思っている物を動かすことで、道を空けたりとか、自動的に並んでくれたりとか、危険を遠ざけたりとかっていう価値を生み出せるんじゃないかなという検証を最近始めました。

実は、ロボットの定義って諸説あるんですけれども、国が定義してる定義もありまして、ここに書いてあるのは、センサー、機能制御系、駆動系、この三つの要素技術を有する知能化した機械システムのことをロボットと呼ぶとNEDOは言ってるんですね。よく考えていただきたいのは、この中で、センサーと、知能制御系っていうのは、かなり僕らの身近にあるんです。例えば、コンピューターっていうのは、本当に、センサーと知能制御系の塊で、カメラも付いてますし、代表格と言えますよね。スマートフォンもそういった物を備えていますと。そう考えると、PCやスマートフォンと、ロボットを分かつ物っていうのは、この三つのうちの一つ、駆動系のみだと思ってます。つまり駆動系こそが、ロボットと、PCとスマートフォンを分かつ要素で、駆動系によって、どんなことがもたらされるのかっていうのが、ロボットの価値だって考えたんですね。

山村:だから動くっていうことなんだ。

渋谷:そのとおりです。僕らはIT屋さんっていうことで、ソフトウェアをやってる人間なので、僕らからすると、動くこと、動かすことがどういう意味を持つかっていうと、実世界に干渉できることなんですよね。先ほど、AIの延長線としてお話ししたときに申し上げたように、今までコンピューターとか、マウス、キーボード、ディスプレイ、スマートフォンの中にしかいなかった、アプリとかそういった物が、現実世界に飛び出して、物をつかんだりとか、運んだりとか、人を移動したりすることに、やっぱり面白みがあって、それって、もっといろんなことができるんじゃないかっていうふうに思って、チャレンジし始めたっていうのが背景です。

山村:私は、障害者の施設も運営してるんだけど、例えば、寝たきりの方で、でも、やっぱり水分補給っていうのはしなきゃいけないと。そのときに、その人の、顔色であるとか、時間的なタイミングであるとかを見計らって、口元に、ストローの付いた、水差しのような感じで飲ませられるような物ができたとすれば、それはロボットということ。

渋谷:ロボットですね。すごい価値をもたらしてくれると思います。

山村:なるほどね。

渋谷:その中で、ニーズとか、可能性っていう意味では、少し、われわれの中で、捉えてるところがあって、今って高齢者の方もすごい多いですし、労働人口っていうのが減少してるっていう側面があって、そこに救世主となるんじゃないかっていう期待感は世間としてもあったりします。あと、今、働き方が多様化してる中で、女性も力仕事したっていいじゃないかとか、非力な方もパワフルな仕事したいとか、いろいろあったりするわけですよね。あとは、もちろん、歳取ってからとか、障害を持っていても、体を使わないといけない仕事だってできたっていいわけですと。そういった部分もロボットがアシストできるんじゃないかっていうこともありますし。

働き方が多様化してくる中で、肉体労働への危機感っていうのも、結構、高まっていると思っていて、いろんな働き方があるんだったら、あんまり体動かしたくないなって人もいると思うんですよね。そういった人たちにとっても、肉体労働は避けられないけど、必ずしも自分の体を動かさなくてもいいんだっていうところっていうのは、少し可能性があると思ってます。

例えば、ロボットの世界では、どういう所にロボットが生きるのかっていう議論がなされたりするんですけれど、その一つが、3DプラスAって言われたりします。3DプラスAって何かというと、ダル、ダーティー、デンジャラス、アクセシビリティっていう単語の頭文字を取って、3DプラスAって呼ぶんですけども、Dは、ダル、つまり単調、二つ目のDはダーティー、つまり汚い、三つ目のDはデンジャラス、危険ですね。こういった、明らかに人間がやりたくないことっていうのを、これって実は、どんなにコンピューターが進化しても、AIでは解決できないんですよね。繰り返し作業とか、ゴミ掃除とか、川の掃除とかっていうのはAIではできないわけですよ。あとは、高所作業とか、原発での作業っていうのも、AIが進化したからといって、解決するものではないと。それを、肉体を持ってるロボットだからこそ、解決できることっていうことで、注目されていたりします。

山村:ロボットとAIっていうのは、区別して考えたほうがいい?

渋谷:いいと思います。

山村:あるいは、ロボットの中にAIが、人間でいえば脳の部分として組み込まれてるっていうことなんですか。

渋谷:分けて考えていただくのが正解だと思っていて、先ほど申し上げたように、ロボットの価値っていうのは駆動、動くことそのものなんですね。なので、動かし方については、いったん理屈の外なんですよね。誰がどう動かそうがよくて、何かが、自動的に動いてくれるから、それが価値があるんだと、まず、みなすと。じゃあ、どうやって動かすかっていうときに、人間が遠隔操縦で動かしたほうがいいのか、AIが自動的に認識して、自動的に動かすほうがいいのかっていうのは、また、その後の選択肢として考えておけばよくて、別として考えたほうがいいと思う。

山村:なるほど。ロボットとAIっていうのはそういう違いなのね。

渋谷:あまり混ぜないほうがいい内容かもしれませんね。

山村:今の話を聞くと、ロボットとの共生っていうか、そういうものっていうのは、すごく未来がありそうだなって思いますよね。

渋谷:おっしゃるとおりですね。最近、注目されていて、社会的にも意義があることだなと思ったのは、こちらのロボットカフェですね。

山村:あれだよね。遠隔でやるやつ。

渋谷:そうです。体に障害を持っていて、自分では動けないようなかたがたが、ロボットを扱って、カフェの店員をする。注文を取って、物を運んだり、お客さんとコミュニケーションを取ったりできるわけですね。これって非常に重要な意味のあることで、やっぱり、体が動けなくて、社会に貢献できないことに、もやもやしている方ももちろんいらっしゃいますし、自分で自分の生計を立てるっていう意味でも、そういった方が、ロボットを自由に使って、こういった仕事の場に出れるっていうのは、非常に重要なことだと思っていて、まさに人間とロボットが協調して生まれた価値だと思います。

山村:そうすると、本当に、障害を抱えている人であっても、かなり重いレベルの人であっても、コミュニケーションツールになり得るし、その社会参加につなげていくことも可能なのかもしれないっていうことなんですね。

渋谷:そう思います。

山村:私が聞きたかったことの一つなんだけど、私、今、想像力っていうことをすごく、ずっと注目して、いろいろ研究とかしてきてるんだけど。想像力って、AIにはできるもんですかね。

渋谷:想像力。

山村:できるようになるかね。例えば、AIによって、あとロボットを使うことによって、AIが予測していることっていうのかな、それを絵で描くことっていうのは可能になってるんですか。その姿を描くときに、未来の姿って描けるんですか、今。ロボットの力で。

渋谷:それも、一概には答えづらいんですけど、例えば、自動車のデザインっていうのは、70年代こういうデザインでで、80年代こうで、90年代こうで、2000年代こうなりましたっていうのがあって、その変遷から、間を埋めるのは結構、コンピューター得意なんです。80年と90年の画像の情報から、85年どうだったのかとか、中間を取るみたいなことはするんです。それと同じ枠組みで、じゃあ、2030年はっていうのは、やればできるんですけど、そこに意味があるものかどうかっていうのは、かなり謎なんですよね。

というのは、車のデザインって、僕らからすると、70、80、90年代って脈々とした歴史があるんですけど、そこにさまざまな要素があるじゃないですか。文房具から取ったあれがあるとか、色のはやりがどうこうとか、家具から取ったデザインがあるとかっていうのがあって、そういった、多面的な配慮っていうのが、コンピューターには難しいですね。やっぱり教え込まれたとおりにやるので。

山村:想像力っていうのが、今の世界というか、人類に残された最後の資源だっていうふうに言う人もいるんだよね。だから、やっぱりAIがそこを超えるっていうのは、まだまだ先の話っていうかね。

渋谷:そうですね。人間が扱える情報って、コンピューターより莫大なんですよね。量的っていうよりも質的に。今の話でもそうですけど、車のデザインを予測するときに、文房具のイメージするかとか、今年はやった花の色をイメージするかっていうと、基本的に教えなきゃしないんですよね。人間って無意識下でも、そういったことを混ぜ込んだりするので。

山村:コーヒーの香りを、AIがどう認知できるのかっていうのは、人間が言葉として教えておけば、香ばしいとか、そういうことを教えておけばできるかもしれないけど、もっと違う感覚っていうのを人間は持ってるわけだよね、それだけではなく。それが、茂木さんなんかが言う、クオリアなのかもしれないけれども。そういうものっていうのは、なかなか難しいんだね、やっぱりね。

渋谷:そうですね。単に組み合わせることであれば、コンピューターって計算が早いので、あらゆる組み合わせをしなさいって言えばするんですよね。ただ、人間ってやっぱり、評価というか、これ組み合わせたら面白そうだなとか、効果ありそうだなっていうのを、結構、ふわっと結び付けるじゃないですか。そこができてないんだと思うんですよね。組み合わせた中から価値のあるものを取り出すみたいなこと、コンピューターでは、よく枝刈りっていうんですよね。ツリー状に木がばーってあって、これとこれと、トーナメント戦みたいにばーっと広がるんですけど、全部やってると、計算に200年かかりますとかって話になるから、どの部分が必要ないだろうねっていうカットをしていくっていうのが、技術的にはあるんですけど、人間がすごく上手なところっていうか、その将棋の得意な方も、どの部分を集中して先読みすればいいかって、的を絞りこんでるんですよね。そういうところが勝ててないところですよね。

山村:でも、面白い世界だよね。

渋谷:そうですね。

山村:それでは、きょうはありがとうございました。株式会社電通国際情報サービス、シニアエンジニアの渋谷謙吾さんにお話を伺いました。渋谷さん、ありがとうございました。

渋谷:ありがとうございました。

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